2018.11.24 Saturday
月の光 あふれて・・・
「この世をば 我が世とぞ思ふ望月の 欠けたることも なしと思へば」(1018年10月16日:旧暦)
栄華を極めた藤原道長が、この歌を詠んでからちょうど1千年後の満月が昇りました。
(道長が歌を詠んだ土御門第跡から:京都新聞)
満月から2日後・・・“居待ちの月“の今日、“月“ にまつわるタイムリーなコンサート「月の光あふれて」を開催いたしました。
『ピアノソナタ〔月光〕』(ベートーベン)で開演。
(この曲を“月光“に例えた先人がおられましたが、ホールは“月光の波“に包まれて・・・。ピアノ:浅井康子さん)
続いて、歌曲『月に寄せて』(シューベルト)です。
先ほどの『月光』の続きを思わせる曲の始まり・・・幻想的な響きの曲に続き、「月にまつわる曲ばかりだと、寝てしまわれそうなので、コミカルなものも入れました」という訳で、“月”とはかけ離れた歌曲『ます』です。演奏前には、大阪弁を交えた解説が飛び出して・・・。
(「水を濁らしたらええねん・・・」釣り人になった大阪弁での解説に、情景が目に見えるようです。ソプラノ:加藤かおりさん)
(ピアノ:浅井康子さん ソプラノ:加藤かおりさん)
「楽譜は台本」・・・ショパンのバラードの中で、極めて人気の高い『第1番Op.23』を演奏する前に、浅井さんは、そう話されました。
(バラード・・・物語的な要素をもった作品を、ピアノがどのように語るのでしょうか)
シューマンが愛するクララに贈ったという歌曲集「ミルテの花」を歌う前に“くるみ“の写真を見ながら楽しく解説してくれました。
(歌曲集「ミルテの花」より『くるみの木』の解説で・・・。ソプラノ:加藤かおりさん)
(「自分の想いが好きな人のところへ・・・」シューマンの歌曲『月の夜』。歌曲の中でも特に美しい一曲です)
休憩をはさみ、加藤さんがフォーレの代表的歌曲『月の光』(Op.46-2)を歌い終えると、やはり“月”をテーマにしたドビュッシーのピアノ曲『月の光』を浅井さんが演奏されました。
(穏やかな月の光は、悲しくそして美しく・・・。ピアノ:浅井康子さん)
コンサート最後のプログラムは、田原祥一郎さんのテノール3曲です。
(「月は美しく輝き 静寂はその翼を広げ、ゆけ、セレナータ・・・」テノール:田原祥一郎さん ピアノ:浅井康子さん)
曲の合間のお話も、とても面白くて、あっという間に3曲の演奏が終わりました。
(歌われた3曲とも“月”にまつわるもの・・・ベルリーニ『美しい月』、マスカーニ『月』)
「月が沈み、夜が明けてきました。」と言って歌われたアンコール曲は『朝の歌』です。
浅井さん、田原さんと古くから交流を深めてこられた戎洋子さんがステージに呼ばれ、懐かしい思い出話を聞かせていただきました。
(〔左から〕浅井康子さん、田原祥一郎さん、戎洋子さん、加藤かおりさん)
今日、ホールにお越しの皆様方は、1千年の時空を超え、『朝の歌』の夜明けが訪れるまで、十分に愉しんでいただけたことでしょう。
今夜は “十八夜“・・・。
月の出を座って待ちながら、いにしえの時代ときに想いを馳せてみてはいかがでしょうか。
浅井先生に、大阪音大短期大学時代にお世話になりました。事情があって、2年生の時に、自主退学をしましたが、その際には わざわざトルコ料理のお店に連れて行ってくださり、そして、たくさんのお話を聞いてくださりました。私自身の子供も成人し、もう一度ピアノに触れたいと思い、35年ぶりに音大付属音楽院の体験レッスンに行ってきました。松永昌子先生に、「浅井先生は退職された」と聞いて、驚きましたが、HPで元気なお姿を見ることができ、とても懐かしい思いでいっぱいです…短大時代に指導してくださった、バラード1番を弾かれたそうで、聴きたかったな、と思いました。バラードの繰り返すフレーズを、「そうでしょう?そうよね〜」という風に弾いてくださいと言われたことを思い出します。これからもご活躍されることを祈っています。