月の光 あふれて・・・

「この世をば 我が世とぞ思ふ望月の 欠けたることも なしと思へば」(1018年10月16日:旧暦)

栄華を極めた藤原道長が、この歌を詠んでからちょうど1千年後の満月が昇りました。

 

(道長が歌を詠んだ土御門第跡から:京都新聞)

 

満月から2日後・・・“居待ちの月“の今日、“月“ にまつわるタイムリーなコンサート「月の光あふれて」を開催いたしました。

 

『ピアノソナタ〔月光〕』(ベートーベン)で開演。

(この曲を“月光“に例えた先人がおられましたが、ホールは“月光の波“に包まれて・・・。ピアノ:浅井康子さん)

 

続いて、歌曲『月に寄せて』(シューベルト)です。

先ほどの『月光』の続きを思わせる曲の始まり・・・幻想的な響きの曲に続き、「月にまつわる曲ばかりだと、寝てしまわれそうなので、コミカルなものも入れました」という訳で、“月”とはかけ離れた歌曲『ます』です。演奏前には、大阪弁を交えた解説が飛び出して・・・。

(「水を濁らしたらええねん・・・」釣り人になった大阪弁での解説に、情景が目に見えるようです。ソプラノ:加藤かおりさん)

(ピアノ:浅井康子さん ソプラノ:加藤かおりさん)

 

「楽譜は台本」・・・ショパンのバラードの中で、極めて人気の高い『第1番Op.23』を演奏する前に、浅井さんは、そう話されました。

(バラード・・・物語的な要素をもった作品を、ピアノがどのように語るのでしょうか)

 

シューマンが愛するクララに贈ったという歌曲集「ミルテの花」を歌う前に“くるみ“の写真を見ながら楽しく解説してくれました。

(歌曲集「ミルテの花」より『くるみの木』の解説で・・・。ソプラノ:加藤かおりさん)

 

(「自分の想いが好きな人のところへ・・・」シューマンの歌曲『月の夜』。歌曲の中でも特に美しい一曲です)

 

休憩をはさみ、加藤さんがフォーレの代表的歌曲『月の光』(Op.46-2)を歌い終えると、やはり“月”をテーマにしたドビュッシーのピアノ曲『月の光』を浅井さんが演奏されました。

(穏やかな月の光は、悲しくそして美しく・・・。ピアノ:浅井康子さん)

 

コンサート最後のプログラムは、田原祥一郎さんのテノール3曲です。

(「月は美しく輝き 静寂はその翼を広げ、ゆけ、セレナータ・・・」テノール:田原祥一郎さん ピアノ:浅井康子さん)

 

曲の合間のお話も、とても面白くて、あっという間に3曲の演奏が終わりました。

(歌われた3曲とも“月”にまつわるもの・・・ベルリーニ『美しい月』、マスカーニ『月』)

 

「月が沈み、夜が明けてきました。」と言って歌われたアンコール曲は『朝の歌』です。

 

浅井さん、田原さんと古くから交流を深めてこられた戎洋子さんがステージに呼ばれ、懐かしい思い出話を聞かせていただきました。

(〔左から〕浅井康子さん、田原祥一郎さん、戎洋子さん、加藤かおりさん)

 

今日、ホールにお越しの皆様方は、1千年の時空を超え、『朝の歌』の夜明けが訪れるまで、十分に愉しんでいただけたことでしょう。

今夜は “十八夜“・・・。

月の出を座って待ちながら、いにしえの時代ときに想いを馳せてみてはいかがでしょうか。

コメント

浅井先生に、大阪音大短期大学時代にお世話になりました。事情があって、2年生の時に、自主退学をしましたが、その際には わざわざトルコ料理のお店に連れて行ってくださり、そして、たくさんのお話を聞いてくださりました。私自身の子供も成人し、もう一度ピアノに触れたいと思い、35年ぶりに音大付属音楽院の体験レッスンに行ってきました。松永昌子先生に、「浅井先生は退職された」と聞いて、驚きましたが、HPで元気なお姿を見ることができ、とても懐かしい思いでいっぱいです…短大時代に指導してくださった、バラード1番を弾かれたそうで、聴きたかったな、と思いました。バラードの繰り返すフレーズを、「そうでしょう?そうよね〜」という風に弾いてくださいと言われたことを思い出します。これからもご活躍されることを祈っています。

  • 弓場(旧姓 奥村) 佳代子
  • 2018/12/06 17:58

昭和57頃、大阪はバブルと言われる時でもありましたが、今振り返っても、何か悪意のある資本や人たちが大阪に入ってきて、日本人も必死で歯を食いしばって、男女とも24時間働けますか〜♪と頑張ってた時期です。
私もまだ、ハッキリとグローバル化の荒波が見えず,とにかく、メディアは週休二日というものの、、自分たちの生活とのギャップに何か不穏な将来を感じていた時期です。
その時期の日本人の先生方は、阪神大震災後、渡英されたりなさった方もいらっしゃって、、。。まさかと思う次女の行方不明。。弓場さんの先生との再会、ピアノの再開、私も励まされます。

  • 竹内かずえ
  • 2023/07/05 18:08